その小競り合いは留まる事なく、「忍は俺のだ!」「いや、俺のだ!」とまるで子供の喧嘩だった。



「…で、右京が飛び出したわけ?」



「まさか!!“出てけ!”ってお父さんに殴られたのよ。」



「ええええっ!?…そんな事、一言も言ってなかった。」



「“駆け落ちだぁ!”って捨て台詞吐いてたけど…そういえば、普通に帰って来たわね…」



母は「右京らしい」とゲラゲラ笑った。



たぶん普通のカップルなら“私の為に殴られて…”と胸を痛めるシーンだろう。



だがこの“黒崎家”では違う。



殴った、殴られたなんて日常茶飯事だし、それが堪える奴らではない。



話を聞いて忍が思ったのは…



“うちの男連中は何故こんなに馬鹿ばっかなのか…?”



という事だった。