とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




『映画じゃないんです。…信じてもらえないかもしれませんが…』



『なるほど。では、彼等が犯人の一味だと…?』



突然『違う!』と声を荒げたダンにベッカーは驚いて目を見開いた。



『…あ、すみません…大声出して…でも違うんです。』



申し訳なさそうにそう言う彼の眼差しが真っ直ぐで、その言葉が嘘ではないのが判る。



『…あなたが違うと言うなら違うのでしょう。…他に覚えている事は?』



『…悪魔が…』



『あ、悪魔…!?』



ますます理解出来ない。



たとえ彼が見たと言っているそれらが妄想だとしても、今まで診てきた患者のそれとは全く異なるのだ。



─“純白の羽根”…



それは恐らく“善”の表れだ。



だが、“紅い瞳”は明らかに“悪”…。



無意識に抱くそれらの妄想は、ほとんどの場合曖昧で形を成さない。



が、彼ははっきりと言った…。



─“悪魔”…と。