『映画じゃないんです。…信じてもらえないかもしれませんが…』
『なるほど。では、彼等が犯人の一味だと…?』
突然『違う!』と声を荒げたダンにベッカーは驚いて目を見開いた。
『…あ、すみません…大声出して…でも違うんです。』
申し訳なさそうにそう言う彼の眼差しが真っ直ぐで、その言葉が嘘ではないのが判る。
『…あなたが違うと言うなら違うのでしょう。…他に覚えている事は?』
『…悪魔が…』
『あ、悪魔…!?』
ますます理解出来ない。
たとえ彼が見たと言っているそれらが妄想だとしても、今まで診てきた患者のそれとは全く異なるのだ。
─“純白の羽根”…
それは恐らく“善”の表れだ。
だが、“紅い瞳”は明らかに“悪”…。
無意識に抱くそれらの妄想は、ほとんどの場合曖昧で形を成さない。
が、彼ははっきりと言った…。
─“悪魔”…と。

