とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~





ダンの病室を後にしたベッカーはしばらく呆然と立ち尽くした。



『…どうかされましたか?』



通りすがりの看護婦にそう声を掛けられ、『いえ…』と慌てて歩き出す。



…彼は…嘘をついていなかった。



彼が思い出した断片的な記憶の話が、頭の中でぐるぐると回った。



それはどう考えても嘘のようで…だが、彼の様子からは嘘に思えず…。



ベッカーをこれほど混乱させる話は初めてかもしれない。



病院のロビーにある椅子に座り、混乱した頭を落ち着ける。



そして、ダンの話の一つ一つを思い出してみた。