とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




そして『いいですか、ダン…』と諭すような口調で彼を見つめた。



『自暴自棄になっては駄目です。今出来る事を一緒に探していきましょう。私がお手伝いしますから…ね?』



ダンはちょっと困ったように苦笑して言葉を選んだ。



『…そうですね…でも一つ約束してくれますか?』



『なんです?』



『私が…私の記憶がどんなものだとしても、決して誰にも言わないで欲しいんです。』



ベッカーはちょっと不安を含んだ眼差しの彼に驚く。



…一体彼は…何の記憶を失ったんだろうか…?



ただ知りたいと思った。



それが彼の想像を超えるものだとも知らずに…。



『もちろんですよ。私はこう見えても精神科医ですから。』



おどけてそう言うベッカーに、ダンはプッと噴き出す。



が、すぐに真顔に戻ると少し声を潜めた。



『…実は昨日、同僚と話してて断片的に思い出した事があるんですよ…』



『ほぅ…聞かせていただけますか?』



ダンはベッカーに頷くと、ポツリポツリと話し出した。