そして『いいですか、ダン…』と諭すような口調で彼を見つめた。
『自暴自棄になっては駄目です。今出来る事を一緒に探していきましょう。私がお手伝いしますから…ね?』
ダンはちょっと困ったように苦笑して言葉を選んだ。
『…そうですね…でも一つ約束してくれますか?』
『なんです?』
『私が…私の記憶がどんなものだとしても、決して誰にも言わないで欲しいんです。』
ベッカーはちょっと不安を含んだ眼差しの彼に驚く。
…一体彼は…何の記憶を失ったんだろうか…?
ただ知りたいと思った。
それが彼の想像を超えるものだとも知らずに…。
『もちろんですよ。私はこう見えても精神科医ですから。』
おどけてそう言うベッカーに、ダンはプッと噴き出す。
が、すぐに真顔に戻ると少し声を潜めた。
『…実は昨日、同僚と話してて断片的に思い出した事があるんですよ…』
『ほぅ…聞かせていただけますか?』
ダンはベッカーに頷くと、ポツリポツリと話し出した。

