検温を終えた看護婦が出て行くとベッカーは傍にあった椅子を引き寄せ、ゆっくりとした仕草で腰を下ろした。
『怪我の具合はどうですか?』
『全身打撲と腕をちょっと…。でもお陰様で痛みもだいぶ良くなりましたし、腕も来週抜糸するらしいです。』
『そうですか!それを聞いて安心しました。』
柔らかく笑うベッカーにダンも笑顔を見せた。
『後は記憶障害だけですね…。』
ベッカーの言葉にダンの表情が曇る。
『…ドクターが来たのは上司の指示だと聞きました…』
『ええ、刑事さんの事を心配してるんですよ。』
『ダンでいいです。…上司が心配しているのは私じゃないですよ…。』
ちょっと切なそうに目を伏せて微笑む。
ベッカーは注意深く彼を観察し、ちょっとため息着いた。

