とある堕天使のモノガタリⅣ ~TORAH~




検温を終えた看護婦が出て行くとベッカーは傍にあった椅子を引き寄せ、ゆっくりとした仕草で腰を下ろした。



『怪我の具合はどうですか?』



『全身打撲と腕をちょっと…。でもお陰様で痛みもだいぶ良くなりましたし、腕も来週抜糸するらしいです。』



『そうですか!それを聞いて安心しました。』



柔らかく笑うベッカーにダンも笑顔を見せた。



『後は記憶障害だけですね…。』



ベッカーの言葉にダンの表情が曇る。



『…ドクターが来たのは上司の指示だと聞きました…』



『ええ、刑事さんの事を心配してるんですよ。』



『ダンでいいです。…上司が心配しているのは私じゃないですよ…。』



ちょっと切なそうに目を伏せて微笑む。



ベッカーは注意深く彼を観察し、ちょっとため息着いた。