『俺がこうして来たのはお前の見舞いってのもあるけど、何があったか知りたかったからさ。』
上司の命令だというのは口にしなくても判ったが、何より彼が本当に知りたいと思った方が大きいようだ。
『何も思い出せないか?あの日…あの時何があったのか…』
『…あの時…俺は…』
…“彼等”を見た。
純白の翼と…深紅の瞳…
そしてもう一人…居た。
『…“マスティマ”…。』
『…は?…何だって?』
思わず声に出して呟いてしまい、ダンは『いや、なんでもない』とその場を取り繕う。
『まぁ、思い出せないなら仕方がないな。』
そう言って同僚は立ち上がるとダンに背を向けた。
が、扉に手を掛けたところで思い出したように彼を振り返った。
『そうそう。上司からの伝言だ。“明日、Dr.ベッカーがそっちに行く”…だそうだ。』
それだけ言い残し、同僚は『じゃあ』と手を軽く挙げて去っていった。

