目覚めた彼の目に最初に映ったのは、真っ白い天井だった。



…なんだ、この臭いは…



鼻に付くその臭いに顔を歪めて身体を少し動かすと、あちこちが痛み小さく呻きを漏らす。



『あ…!気がつきましたか!?今ドクターを呼びますからね。』



…ドクター?…ああ、ここは病院か…。



鼻に付いた臭いがエタノールだと気付いた。



…何故俺はここに…?



全く思い出せなかった。



ただ酷く怠くて眠かった。



誰かが来た気配がしたが、彼は睡魔に勝てず浅い眠りに落ちて行った。



再び目を開けると、窓の向こうに青空が見えた。



『…ダン?起きたの…?』



心地よいその声に振り返ると妻のシェリルがいた。



『…シェリー…なんだ、なぜ泣いてる…?』



『ううん…なんでもないわ。ただ、あなたが無事でホッとしただけよ。』



『そうか』と答えたものの、自分の身に何があったかは覚えていなかった。