右京は路肩に停めたバイクに寄りかかってタバコに火を付けた。



忍の勤務先である出版社のビルを見上げ、硝子張りのエレベーターが上って行く様子を眺める。



煙を吐きながらぼんやり眺めていたが、一向に動く気配のないエレベーターに首を傾げた。



「…お待たせ!」



「おっと…!」



走って来た忍に抱きつかれ、一瞬よろめく。



「お疲れ。…つか、おせぇよ!」



「時計を見間違えてたみたい。…いつから待ってたの?」



「30分くらい前。…なぁ、まだ誰か残ってんのか?」



「さぁ…エレベーターが上の階で止まってたし、居るかもね。」



「ふ~ん…ま、いっか。俺の忍ちゃんは捕捉したし!」



そう言って忍のこめかみにキスを落とすとヘルメットをスポッと被せた。



右京は彼女をバイクに乗せ、まだ動かないエレベーターを横目にエンジン音を轟かせて走り出した。