ニックはあまり気が進まなかった。



もちろんアランの指示の事である。



それは丁度昨日の昼間にP2に顔を出したのが始まりだった。



今思い返せば最悪なくらいタイミングが悪かったとニックは思う。



いつもならほとんど昼間に居ないはずのアランが昨日に限ってそこに居て、更に丁度彼がバチカンからの書状を読み終えた時だったからだ。



そしてアランはP2に入って来たニックを見てニッコリと微笑んだ。



『丁度いい所に来てくれた。ちょっと死海文書について調べて来てくれ。』



『………はぁ?』



一瞬アランがイカれたのかと思い、それが思いっきり顔に出た。



アランは眼鏡の奥の瞳孔をギラつかせ、咳払いをして足を組み直す。



『死海文書を調べて来てくれ。』



『死海文書って…あの死海文書?』



『そう。あの死海文書だ。』



『…ネットでも見…』



『“現物”を調べて来てくれ。』



『………』



全く折れる気配のないアランにニックはムッと口を尖らせた。