大学の盛大な卒業式を終え、7月に入ると夏真っ盛りだった。



右京はクーラーの利いたアパートの涼しい部屋に居た。



ソファにごろ寝してうとうと休日を過ごす。



『…これが正しい夏の過ごし方なんだ…なぁ?そう思うだろ?』



突然そう振られて原稿を書いていたニックが『あぁ?』と振り返った。



『クロウ…夏なら海だろ?ビーチと美女と太陽!!それが“夏”だよ』



…それはお前だけだろ…



まだ“夏の過ごし方”について喋り続けるニックを無視して、右京は欠伸を一つすると瞼を閉じた。



が、携帯の着信音が邪魔をする。



そして、通話ボタンを押すと同時に聞こえて来た声に右京はげんなりした。



『よぉ、クロウ!!お前暇か?』



『…ジェイか…今忙しい。』



『そうか。とりあえず海行くぞ!!』



午後に迎えに行くと言って切れた携帯を睨んで右京はぶつぶつと愚痴を溢す。