辺りを見回すが何も居ない…。
忍は首を傾げながらバッグからハンカチを取り出すと頬を押さえていた。
この程度で良かったとホッと胸を撫で下ろしたが、直ぐに右京と忍の間を何かが通り過ぎた。
「…なっ!?」
「なにっ!?…今何か飛んで来たよね!」
「…らしいな…」
だが不思議と殺気は感じない。
…なんだ…?
微かな気配はあるが目には見えない相手。
…間違いない…ウトゥックだ…!
そして、その気配と同時に感じたのは“視線”だった。
…どこだ!?
感覚を研ぎ澄まし、視線の主を探っていると今度は違う何かの気配。
もの凄いスピードで迫り来るそれは、忍の真後ろからだと気付き、咄嗟に彼女を引き寄せて足元から風を巻き上げた。
─バチッ…!
右京達の周りで何かが弾かれる。
忍は右京が巻き上げた風の激しさに思わず目をグッと閉じた。
─バチッ…バチッバチッ…!
無数に飛んで来たそれが弾かれる音だけが聞こえる。