小鳥の囀り…木々のざわめき…風の囁き…




辺りにはそれらしか聞こえない。




彼はゆっくりと森の中を移動し、ファインダーを覗いた。




自分の目で見た景色と違い、ファインダーを通した景色はまるで絵画のようだった。




その美しさに暫し心を奪われる。




彼は夢中でシャッターを切った。




こうやって独りで趣味に没頭する時間なんて最近なかった。




久しぶりに有意義な休日が過ごせたような気がする。




そう思いながら近くの切り株に腰を降ろし、ボトルの蓋を開けてミネラルウォーターを一口飲んだ。




そしてまた美しい景色を眺めていた時…




突然鳥達が何かに驚いたように一斉にバサバサと飛び立った。



彼は驚いて立ち上がると辺りを見回す。




─シュンッ…!




何かが空を切る。




─シュンッ…!



また…。




目には見えない何かが確かに彼の周りに居た。




彼はカメラを構え…




─シュンッ…!




それに向かってシャッターを切った…。