問題山積み

挨拶してくれる店員の対応が、馬鹿みたいに丁寧で、くすぐったい。
いかにも女の子が好きそうなお店。
しかも普通のダイニングバーではなくエスニックを選ぶ辺り、圭君らしい。
席に着いてメニューを開くと、予想よりは価格設定が低いものの、それでも友達と気軽に来るには敷居が高いお値段ばかり。


「俺、ジントニック。亜樹は?」

「モスコミュールにしようかな」


私がメニューを指すと、圭君は片手を挙げてスマートに店員を呼んだ。


「ジントニックとモスコミュール。それと、これとこれ、あとこれ、これも」


ぱっぱとオーダーをする圭君の指先を、ぼんやりと見つめる。
ご飯を食べに行く時、私はほぼ毎回圭君にオーダーを任せている。
私は好き嫌いがないから、何を食べていいか悩んでしまうんだ。
何を食べても美味しく感じるというのは、メリットだけじゃない。