問題山積み

今すぐにでも抱きしめられてしまいそうな距離感に、不覚にもどきりと胸が高鳴る。
私と会う時は毎回スーツだ。
グレーのストライプのスーツは、細身の圭君によく似合っている。
シャツを開けた胸元には、細いシルバーのチェーンが光る。
それが妙に色っぽい。


「この前先輩と行った店が、なかなか良くてさ。何食っても旨いのよ」

「へえー」


感情表現が下手くそな私は、期待とは裏腹にその気持ちを相手に伝えることができない。
それでも気にしないでいてくれる、圭君は。


「行こ。俺、腹減っちゃった」


圭君は私の肩をごくごく自然に抱き寄せる。
今日圭君に会ったのは、きっと正解だった。















圭君が案内してくれたのは、お高そうなエスニック料理のお店。
暗めの照明と木製のディスプレイ、薄いカーテンでテーブルとテーブルの間が仕切られているから個室みたいになっている。