カウンターに並ぶ色とりどりのケーキ達は、女の子達に食べられるのを今か今かと待ち望んでいるように見える。
真っ赤な苺が真っ白いクリームの上でよく映えるショートケーキ。
宝石箱のように多種のフルーツをあしらったタルト。
艶っぽく輝くプディング。
飾り気なくどっしりと構えたガトーショコラやチーズケーキ。
どれもこれも、私達の目をひく。


「亜樹ちゃん、取りに行こっ」


愛里ちゃんは席に着くや否や、そわそわとした様子で立ち上がった。
愛里ちゃんはとても細い。
細いのを通り越して、身体が薄い。
それなのに、普通の女の子の倍は食べる。
食べたものが果たしてどこに行ってどうなっているのか非常に気になるところ。
だけど、愛里ちゃんは自分自身の身体を「細い」と言われることをあまりよく思っていないらしい。
あまりに言われすぎて、どう返していいのか分からないんだって。
そりゃあそうだ、女の子が「細いね」って言うのは、多かれ少なかれ妬みを孕んでいることが殆どなのだから。