澪とは、好きな漫画が同じで、それで話が弾んだ。
だから一緒にいてもいいかなあって思って、私も「付き合う」という形を取った。
澪の趣味はコスプレ。漫画のキャラクターそっくりに化けるのが上手で、そんな彼女を見ているとうっとりする。
本職は雑貨屋のアルバイト。根詰めて働かないタイプの澪がこんないいマンションに住んでいるのは、親が金持ちで仕送りをしてもらっているから。


「着替えとタオル、準備しておくね」


澪はそう言って部屋に引っ込み、私は浴室に入った。
澪のメイク落としを使って化粧を流し、頭から熱いシャワーを浴びる。
そして、いつものように片手にいっぱいのトリートメントを髪に馴染ませていく。
硬い髪の毛が、ゆるゆると本来の状態に戻る。


「何やってるんだろ、私…」


シャワーの音で、私の独り言は呆気なく打ち消された。
それでも私は、男の子の自分が女の子の自分より好き。
一番自分が綺麗に見えるから。
浴室から出たら、澪の為だけの碧。
明日からは不特定多数の為の碧。
歩なんて名前、棄てられたら楽なのにな。










END.