おぞましくも滑稽な考えは、玄関に靴と一緒に置いていく。


「お茶、煎れようか?」

「ううん、シャワー浴びたい」


何者だか分からない自分を、早く流したかった。
玄関でぼーっと佇む澪をほっといて、私は浴室の前で服を脱ぐ。
澪に「付き合って」と言われ、こんな関係が始まって早2ヶ月。
澪の家に来ると、もうすっかり自分の家と同じように振る舞うようになった。
それだけ慣れ親しんだ間柄なのに、私達は本名で名前を呼び合わない。
なぜなら、澪との出会いもまた、あのサイトを介して――つまり、澪は元は私のお客だったから。
初めて澪に会った瞬間、私はすぐに綺麗な子だと思った。
人形みたいなレトロ調の服を着て、アマレットと同じ色をした髪は胸の辺りまで伸ばし、ゆるやかにパーマがかかっている。
生まれ変わったら、こんな女の子になりたいと思った。
そんな子から、現実で出会って数日後に「付き合って」と言われ、拒否する理由もなく、私は澪と付き合っている。