ああ、この子もまた、現実の異性をきちんと好きになれないんだ…。


「また、遊んでくれますか?」

「勿論。俺からも連絡します」


俺の繋がりは、こうして増えていく。
沙絢は嬉しそうに券売機へと小走りで向かい、原宿から池袋までの切符を買ってきた。


「碧さん、ありがとう」















池袋に着くと、ちょうど19時。
駅に一番近いマックに入り、トイレで化粧直しを始める。
赤みを消した唇は、ピンクのグロスを。
チークをふんわりと頬に乗せ、スプレーでセットした髪はある程度ほぐしてやる。
シルバーのアクセサリーは全部外して、ポーチの中に忍ばせていた小さなダイヤモンドがついたネックレスをつける。
着ているものは男の子のそれのまま、靴も重厚なブーツのままだけど、化粧を変えるだけで十分「メンズライクな女の子」に変身できるんだ。