『碧を待っている間に、勉強してたよっ』

『ほんとに?』

『ほんと』

『いい子だな、菫は』

『えへへ///』


会ったことのない菫は、俺にとっては可愛い妹のような存在になっている。
インターネット上で親しみを持ち合うなんて、数日あれば十分だ。
奇妙奇天烈な関係のように見えるかもしれないけど、インターネット上では至極当たり前の現実。
会ったことがないのに「彼氏だ」「彼女だ」と名乗りあっている連中だっているくらい。
なに、俺からしたらそんなに可笑しいことじゃない。


『碧は、明日はお客さんと会うの?』

『うん、午後から』

『そっか』

『妬きもち?』

『うん…』


菫もまた、会ったことのない俺にすっかり感情移入している。
ホームページに俺の写真をいくつか掲載しているから、大方、それを情報として妄想できるんだ。
あの写真だけなら、はっきり言って、我ながら普通の男性のホストと何ら差異はない。