「別れるつもりはないもん…」
「要らないじゃん、よその女にへらへらしてるような男」
「でも、私と二人でいる時の遊晴は優しいよ」
亜子が遊晴の悪いイメージだけを抱かないように、私は精一杯遊晴をフォロー。
私みたいな女に勿体ないくらい、遊晴はいい男なんだ。
「それが何の意味を成すの?」
亜子は食べ終えたお握りの包装をくしゃくしゃに丸めて、ビニール袋に突っ込んだ。
私はその隙に、携帯を確認する。
ご飯を食べる前に送ったメールの返信は、まだ来ていない。
そんな私の様子に、亜子は呆れたような顔で、
「別れたくないなら、奪還しなさいよ。さっさと」
捨て台詞を残し、「喫煙所で煙草吸ってくる」と腰を上げた。
一人置き去りにされた私は、黙々とお弁当の残りを平らげる。
遊晴はお弁当、食べてくれたかな。
うちの卵焼きはしょっぱいけど、遊晴は甘い方が好きだから、砂糖をたっぷり使って焼いたんだ。
私のは、まともに味見すらされず、重力に従って落下してしまったけど。


