「言い訳だよ、そんなの。大地が忙しいのは知ってるけど、だけど、言い訳でしかない」
「そうだよな…」
大地の困った表情が崩れない。
そこに畳み掛けるかのように、私は続けた。
「…ねえ、私は結婚してからもこんな思いをしなくちゃならないの?」
無愛想な若い女性店員が、ビールのジョッキをほとんど無言でテーブルに叩きつけていった。
私はそのひとつを、黙って大地の方に押しやる。
「『寂しい』とか『会いたい』とか、女々しいことを言うつもりもないけど。だけど、いくらなんでもあんまりじゃない?数週間、まともに連絡もない、電話はでない。大地の仕事のことは理解しているつもりだけど、でも…」
逆接の後、私は言葉に詰まった。
これ以上大地を責めても仕方がないと気付いたから。
嫌なら、今すぐリングを突き返せばいいだけのこと。
私には、それができない。


