問題山積み

だから、大地の痕跡はいつも跡形もなく消していた。
ロックを掛けたら怪しまれる。
一番いいのは、敢えて放置しておいて大地の痕跡をきれいに抹消すること。
これが案外効果があって、浮気を疑われたことはなかった。
嫉妬深い涼平を転がすのは、意外にも容易だった。
それも全て、もう終わってしまったこと。
それなりに好きだったはずの涼平を失っても、私の傷はそんなに深いようには思えなかった。
それに気付いて、涼平と結婚しなくて良かったと、初めて感じた。
受信箱の一番上にのし上がった大地のメールを開く。














私達の行きつけの格安居酒屋は、いつも喧しく賑わっている。
今日もしかり、私達は店の奥で喧騒に耳を傾けながらさして美味しくもないお通しを摘む。


「リングだけ渡して『結婚しよう』だなんて、実感湧かなくて…」


気まずそうに、大地が笑う。