問題山積み

教師だから仕方ないのは分かっている。
でも、そんなところが涼平を心底好きになれない要因だということは否めなかった。
「彼氏は顔が良くないと!」だなんて女子中高生のようなくだらない理想はかなぐり捨てたはずだったのに。
不意に、大地の香水の匂いを思い出した。
どこのブランドのものか分からない、だけど男の人らしい甘くない匂い。
大地の体温で高く香るその香水が、私は大好きだ。
後から抱きすくめられた涼平からは、ドラッグストアで特売のシャンプーの匂い。
どうしても、好きになれない。
視線はテレビ画面でも、今の私は視覚を塞ぐくらい嗅覚が研ぎ澄まされている。
1年ほど前に上映されたその映画は、哀しくも私の中にはこれっぽっちも入ってはこなかった。


「ところでさ」


涼平が突然、温かいふくよかな手を私の指先に重ねた。