「佐伯さん、こんにちは。ご無沙汰しています」


20歳にしてはあまりに大人びた、そして今まさに人気が上がってきているシンガーソングライターにしてはあまりに丁寧な口調で、まひるは佐伯に微笑んだ。
“まひる”という芸名の通り、彼女の笑顔は女の私から見てもほっとするくらい温かくて魅力的。
そんな彼女の雰囲気が、人気に繋がっている。
どんなに深く笑っても、その顔に皺ができることがない、ぴんと張りのあるつやつやの肌。
若いって、心底羨ましい。
私だって世間一般からすれば決して老けてはいないはず。
それでも、26歳と20歳の差は大きすぎる。
さっきの伊藤さんの言葉が蘇る。
まひるは、大地に何を思っている?
仕事中だというのに、嫌な考えが浮かんで、払拭できない。
こんなの、社会人として宜しくないよ。