「佐伯さんですか。久しぶりですね」

「前にまひるがアルバム出した時に、佐伯さんがインタビューしてさ。まひるがえらく気に入ってたな」


伊藤さんは相も変わらずパソコンの画面から目を反らさない。
私だけが伊藤さんの方を見ている。
大地と私が付き合っていることは、この業界の人間にはお互い誰一人として言っていないから、勿論伊藤さんの今の発言に全く悪意はないはず。
それなのに少しだけいらっとしたのは、いわゆる妬きもちなんだろう。
私はパソコンの横のペットボトルなオレンジジュースを、口に含んだ。
結婚したら、妬きもちは無くなるんだろうか。
独占欲は薄れて、いやいっそ消えてしまって、大地がどんな可愛い女の子と関わろうと関心を持たなくなるのかな?
ちっとも想像がつかないわ。














私とまひるは、14時ちょうどに会議室に入った。