「了解です。14時って、まひるさんのインタビューですよね?」

「そう。俺、別の現場に出なきゃならなくなっちゃってさ」


この事務所に勤めてもう丸3年。
いつも思うが、作業内容が変わるのが突然すぎる。
こっちが予定していた作業など、全く無視。
仕方ないか、そういう業界だし。
それに、伊藤さんはまひるのマネージャーだけでなく、他のアーティストのマネージャーも兼任している。
だからこの場合、私は別に伊藤さんを怨まない。
まひるは現在人気急上昇中のシンガーソングライター。
20歳になったばかりの女の子だというのに、とても礼儀正しく、うちの事務所でも評判がいい。
なので、まあ、まひるの相手だったら別にいっかーという感じ。


「インタビューって、うちの会議室でやりますか?」

「うん、もうちょっとしたらまひるが来るからさ。ああそうそう、インタビュアーは佐伯さんだよ」


キーボードを叩く音に紛れる伊藤さんの言葉の中で、“佐伯“という単語だけがやけに大きく聞こえた。