いつからポケットに忍ばせていたのだろう。
今日1日、細身の大地のシルエットからは、その膨らみは全く気付かなかった。
付き合いが3年ともなれば、ちょっとやそっと様子がおかしいくらいでは、それに気付かないのかもしれない。
そして、私と大地の年齢で3年の付き合いともなれば、「そろそろ言われるだろう」と予感はしていた。
人生でたった1度(普通の人は)だけ訪れる、一生ものの感動のシーン。
嬉しいことに間違いはないが、ドラマみたいに涙を流すほどの感動は、悲しいかな湧いてこない。
それに気付かれないように、私は、


「有り難う」


そう言って泣きそうな顔を作って、大地の目を真っすぐ見つめた。
車内に篭るネオンの光で、大地の瞳がゆらゆらと煌めいて見えた。














自分がやけに要領が良くて器用だと気付いたのは、社会人になってから。