湯呑みを握る両手が、ひどく熱い。


「そうだ!明日の初売り、お姉ちゃんも一緒に行こう?克巳(かつみ)が出勤の時に、車で送ってくれるって言うからさ」


「ねっ?」と婚約者に同意を求めると、どこまでも人のいい婚約者が「是非」とにこにこ笑った。
私には美和子の意図するところが、自分一人だけ男を連れて、「私は彼氏がいます、いいえ実は婚約者です」というアピールをして優越感を得たいだけのようにしか見えない。
私に惨めな思いをさせて、何が楽しいんだ?この性悪女。


「余計なお世話だから。ほっといて」


その場の空気に耐え切れず、私は湯呑みを炬燵の上に叩き付けて立ち上がった。
正月なんて、これっぽっちもおめでたくない。
おめでたいのは馬鹿な女達で、私はただただつまらない思いを噛み締めるだけ。
今はまだ何も知らない舞侖を見下ろす。