「明けましておめでとうございまーす!」
異様な空気をすぱっと断ち切ったのが、美和子の声だった。
それと、その後ろに背の高い婚約者。
「明けましておめでとうございます、お邪魔します」
目尻に皺を作って優しく微笑む婚約者は、いつだって完璧な婚約者を演じている。
美和子は「美容師の嫁なんて、将来家計に苦しまされるのが目に見えているわあ」なんてしょっちゅうぼやいているけれど、私にしたらただの惚気にしか聞こえない。
その彼に、私はぎこちなく口角を上げて、
「明けましておめでとうございます」
精一杯の大人の対応をした。
美和子と馬鹿嫁は、同い年ということもあり、私と馬鹿嫁よりは仲が良いように見える。
「ほんと、美和子ちゃんの彼氏さんって超イケメンだよねえ」
「そりゃ、お兄ちゃんに比べたらね。顔面の不出来な兄で申し訳ない」
「どういう意味だよ、美和子」


