好きだとかそういう台詞は、当然聞いた覚えがない。


「俺は、お前に心底惚れてるんだけどね?」


くしゃりと、圭君は私の頭を撫でた。
そんな言葉、今更信じられるはずがない。
取って付けたような台詞に、自分の顔が曇るのが分かる。


「知らないよ、そんなこと。第一、いろんな女の子と連絡してるんじゃないの?」

「お前に会うまではそんな感じだったかも。でも、お前と居るのが楽しくなってからは、そういうのも面倒になってやめちゃったわ」

「嘘ばっかり」

「嘘じゃねえって。大した証拠にもならないけど、携帯見てみる?」


圭君はポケットから携帯を取り出し、私に手渡した。
無意識にその携帯に手を伸ばしてしまったものの、彼女でもなんでもない私が携帯なんて見ていいのかどうか。
だけど、引っ込みがつかなくて、とりあえずその中身を探る。
無言でメールや発信履歴と着信履歴を見ていくうちに、私は目を疑った。
殆ど全て、仕事のことばかりだったから。