「平気」
私が具合悪いと思い込んでいる圭君に対して、どう対応していいか分かんないな。
「…それならいいんだけど」
生理の時の不機嫌さと明らかに違うことに気付いているようで、圭君はそれ以上言及はしない。
私も圭君の隣に座る。
「ていうか、圭君どこに居たの?」
「会社」
「ふうん」
働いている男の人は、いろいろ便利だと思う。
何か聞かれたら「会社」「仕事」「先輩と」「後輩と」「同僚と」で大概のことは片付いてしまうから。その真偽がどうであれ。
だけど、そんな中圭君がここまですっ飛んで来たのは事実。
似つかわしくない行動に、私の方が落ち着かない。
テレビをつけるのをすっかり忘れていたから、無音がやけに気まずい。
それはお互い様のようで、いつもお喋りな圭君は暫く黙った後、
「俺、今思ったんだけど」
「なに?」
「お前が具合悪いと思ってここまで来ちゃったけどさ…迷惑じゃないかなーって今ここで気付いたんですが…」
そんなことを、顔だけ私の方を向いて、目線を泳がせながら言った。


