問題山積み

先生は軽く触れているつもりなのだろうが、箇所によっては脳天まで響くような痛みが走り、私は顔を歪めた。


「あ、ごめんなさいね。一旦口をゆすごうか」


倒した診察台を先生が起こしてくれ、私は口をゆすぐ。
口の中は先生のはめているゴム手袋の味がして、口に含んだ水は温い。


「虫歯、なんですか?」


自由に開閉できるようになった口を開く。
マスクや帽子で覆われて目だけしか見えない先生の顔を、私は見上げた。


「虫歯ですね。それも沢山」


目の部分だけでは、先生の表情が読み取れない。
ただ、その声色に感情は感じなかった。


「だって、毎日歯磨きしてますよ!」


納得がいかない。
毎朝毎晩、欠かさず歯磨きをしている。


「磨き方が良くなかったり、正しい歯磨きをしないと、歯を磨いていても虫歯になるケースがあるんですよ」