「亜樹ちゃん、どうしたの!?」
Tシャツを畳んでいた村田さんが、すぐに私に気付いて駆け寄ってきた。
幸いにも店内にはお客さんはおらず、私がしゃがみ込んだのはレジの内側。
「す、すみませ…痛っ!」
「大丈夫?どうしたの?」
心配そうに覗き込む村田さんに、私はその質問に答えるのを躊躇した。
お腹や頭が痛い、と言うのならすぐに伝えられただろうに。
「…歯が…いきなり痛くなって…」
あまりに些細な箇所に、私は小声で答えた。
「歯?」
「は、い…」
村田さんが困った表情で私の肩を抱く。
その間も私の奥歯はぎりぎりと軋むように痛み続けて、私は頬を強く押さえた。
原因が全く思い当たらず、急すぎる痛みの襲来にうろたえるばかり。
村田さんは少し考えた様子で、
「親知らずでも生えてきたのかな…」
と、首を傾げた。


