さあっと血の気が引く。


「…圭君、ごめん。ちょっとお手洗い行ってくる!」


私は堪らず、トイレに駆け込んだ。















洋式トイレの便座を上げ、便器の中を覗き込むようにして口を開ける。
どうして食べた?
どうして飲んだ?
痩せたいのに、太りたくないのに。
押し寄せる罪悪感に、私は無意識に指を口に突っ込んでいた。
こうして吐くことができるなんて、誰も教えていない。
それなのにこうして吐くことができると瞬時に分かったのは、本能なのかなんなのか。
ただ、胃袋の膨らみが突然苦しく感じた瞬間、「出したい」という気持ちが突然湧いたんだ。
そして過ぎった村田さんの姿。
「リセットしちゃえば、何もなかったことに」。
お酒がそうなら、食べ物だってそうに違いない。
右手の人差し指を舌の根本まで突っ込む。


「うえっ!」


狭い個室で、醜く響いた低い声。
苦しい!…そう感じると共に、嗚咽し、胃液が上がった。