――――19日前

 2月13日




あの日、
私は仕事が遅くまで長引いてしまって、帰るのが夜中になっていた。


さすがに人一人おらず、
雪がふわりふわりと降っていた


気温はマイナスの域で

吐く息は白く
手袋をしてない手はかじかみ
雪の冷たさが足下から伝わってくる



早く帰ろうと、
早足で歩き出した時

声が聞こえてきた



『‥ケテ』

「え?」


『タス‥テ、タスケ、テ‥』



静かな街に響いているのか
私の頭に響いているのか

聞こえてはいるが、
普通に人と話す感じとは違う


まるで“気感能力者”と話している感じ



『タスケテ、僕ハ此処ダ‥』


声がする方へと
足を進めていけば雪が積もった場所があった



「まさか、ね」


『此処ダヨ』


不思議と恐怖心は無かった


たぶん、
聞こえる声が震えていたから