正樹は美紀の部屋をノックした。


「美紀。実はお前に話しておかなくてはいけないことがある」
そう言って正樹は仏壇の前に美紀を座らせた。


真実をうち明けようとしていても、心が揺れた。


自分の愛を叶えるのためではない。
息子達の希望だ。
正樹は自分にそう言い聞かせながら、美紀の前に立っていた。


「私が本当の娘じゃないってこと? ずっと前から知っていたわよ」
意表を突かれた正樹。何故かへなへなと崩れ落ちた。

「良かった」
正樹がため息を吐く。何て切り出せばいいのか、試行錯誤していた。


「えっ! 知っていた。何時だ!」
我に戻った時、正樹はことの重大性に気付き驚きの声を上げた。




「高校に入る時、戸籍謄本を取ったでしょ。あの入学願書。それをこっそり見たの」


「そんなあんなに気を遣ったのに」

正樹はまたへなへなと崩れ落ちた。


「パパがずっと気を遣ってくれたから、三つ子として仲良くしてこられたの。ありがとうパパ」
美紀は正樹の胸に顔をうずめた。


「美紀。お前の本当の母親は、結城智恵さんと云う人で、パパの初恋の人なんだ。でもだから養女にした訳じゃない」
正樹は美紀を両腕で優しく包んだ。