トリプルトラブル【完】

 東京駅に家族はいた。

結城智恵の放置されていたコインロッカーはどれだか解らない。

無数にあるそれら……

でも祖父はその一つ一つに手を触れていた。


美紀の祖父が卒業式に合わせて上京したと思い込んでいた秀樹と直樹。

美紀を産んでくれた結城智恵の思い出の地を巡り、感謝するためだったのかとも思った。


卒業式に出席するためだけだったらこんなに早く来なくても……
秀樹も直樹も本音はそう思っていたのだった。




鍵のかかっていないコインロッカーを開けてみる。


(――智恵……)
祖父は泣いていた。

その僅かな空間に閉じ込められようとしていた智恵。
もし、まともに鍵を掛けられていたら……


結城智恵も……

長尾美紀も存在して居なかった。


祖父は憎むべき誘拐犯に感謝した。
そして……
あの時代に感謝した。
全て、偶然がもたらしてくれた命だったから。


コインロッカーには、通気口がない。
完全密室だった。
もしまともに締められ鍵を掛けられてはいたら……

窒息死していたかも知れないのだ。
だから……
祖父はその偶然を感謝したのだった。