-チリン-


ドアベル代わりの小さな鈴が鳴る。


「いらっしゃい。」


男のくぐもった声。店主だろうか。


埃っぽい棚を順番に見ていく。ふと、僕の目に一冊の本が目に入った。


本を手に取る。やけに年季の入った、古い表紙だった。


「それは黒魔女の物語だよ。」


カウンターから店主らしき人物の声がする。


「一人のエリート黒魔女の物語さ。読みたきゃ読んできな。じっくり読んで買うか決めな。」


……なんという気前のいい店だろうか。


「は、はあ……」


僕は、曖昧に返事をするとゆっくりとページをめくった。