「ど~したのぉ?優海ちゃん」
片桐さんは私の目の前で手をフリフリする。
「ちょっと考え事を・・・・・・」
「考え事って、彼氏のこと?」
「え?あ、まぁそうです」
とまた嘘をつく。
と・・・・・・
「嘘ばっか!俺に嘘ついちゃいけないんだ~」
人差し指の先で私のおでこをツンと突く。
心までチクンと痛む。
好き・・・・・・だな。
どうしよう。
こんなにも可能性の低い恋をいつまでも続けていて、私の将来大丈夫?
あきらめようって、多分100回くらい考えた。
でも、無理だった。
だって、会っちゃうんだもん。
この笑顔で微笑みかけられちゃうと、あきらめるなんて無理過ぎる。
「ま、恋の相談ならいつでも乗るから。何かあれば俺に言えよ。いちおう、優海ちゃんよりも恋愛経験は豊富だから」
そんなこと知ってます。
大学時代に、学校で一番モテていたことも知ってます。
画家を目指してバイトをしていた頃に、金持ちの女性からお小遣いをもらっていたことも知ってます。
夢をあきらめて、サラリーマンになった時、片桐さんの為に泣いた人がたくさんいたことも知ってます。
最近だって・・・・・・
数人の女性から言い寄られているってことも、知ってます。

