「・・・・・・なんでだろ」
「俺の気持ちはどーすんだよっ!お前が無事に片桐さんと付き合って、やっとお前から解放されると思ったのに」
「ごめん・・・・・・そうだよね。迷惑だよね」
「そうじゃなくて!!天然バカだから許してやるけど、そういうのを思わせぶりって言うんだよ。これから美琴を好きになろうって思ってる俺に、電話してきて・・・・・・話したいとか会えなくて寂しいとかそんなこと言うなんて・・・・・・バカか、お前」
冷たい言い方の中にも優しさがある。
あきら君・・・・・・
ごめんなさい。
私、ひどいことしてる。
こんなことしてると、片桐さんもあきら君もふたりとも失ってしまうことになる。
「別に怒ってるわけじゃない。俺は優のことが好きだったんだから、こうして会えるのは嬉しいけど」
あきら君は私の隣に腰掛けて、大きく息を吐きながら言った。
「あれ、俺の最後の賭けだったんだ」
「あれって?」
あきら君は、空を見上げた。
「この前・・・・・・お前のこと抱きしめただろ?片桐さんの前で」
「うん」
「お前と片桐さんをくっつける作戦って言ったけど、半分は俺の最後の悪あがきだったんだ。片桐さんが、俺と優が抱き合ってるのを見ても何も反応しなかったら、本気で俺が優をもらおうと思った。そんな片桐さんじゃ優を幸せにできないから」
やっぱりあの涙は本物だった。
あきら君にそこまで愛された私なのに、今は自分で自分が嫌いになりそうだよ。
私ってこんなに嫌な女だったんだ、って。

