「あんた、今がいいチャンスなんじゃない?経営の勉強したいって言ってたじゃん」
随分前から言っていたけど、時間がないと言い訳して、全然できていなかった。
私の今の夢は・・・・・・
お父さんとお母さんのあの店を、しっかり守って行くこと。
私がいつかあの店の店主になる。
「恋がうまく行かない時こそ、何かに挑戦するべきだよ。経験者が語ってんだから、本当だよ」
康子は今までいつもそうだった。
高校時代から、失恋するたびに資格を取ったり、海外旅行に行ったりしていて。
私は、そんな康子に憧れていたけど、自分には無理だとあきらめていた。
「頑張ろうかな。このままじゃ、私だめになるよね」
「そうだよ。新しいことを始めれば新しい出会いもある。あんた、顔はかわいいんだから、モテるはずなのに」
褒め言葉なのかどうかわからないけど、かわいいと言われれば悪い気はしない。
あきら君も片桐さんもいなくなってしまった今、自分にできることは“自分磨き”だ。

