「なら、2人で行ってきたらどう?私達は見ても入らないし…」
「そうだよな。由紀、行ってこい」
「え、ちょ、優太も来ないのかよ?!」
焦り出す由紀に対し、美香は若干膨れっ面。
「なに、私と2人だと何か不満なのー?」
「え、あ、そういう意味じゃっ」
「これじゃどっちがお願いしてるのかわかんないね?」
あははっ、と笑う春に、肩を落とす美香達。
優太も2人のやり取りを見て、中学の頃と変わらないな、と笑った。
その後、美香と由紀は部活見学へ行き、春と優太は自宅へと向かっていた。
「ねぇ、優太」
「ん?」
「もし、勉強が難しくなかったら、まだ陸上続けてた??」
「なんだよ、いきなり」
「いいからーっ」
うーん、と少し悩んだ後、何か思い付いたように顔を上げた。
「やってないと思う!」
「え…なんでー?」
「だって……」
そう言って、じっと春を見つめる。
え、もしかして……。
「由紀達といる時間が短くなっちゃうからさ」
「…あー」
「なんだよっ、あーって」
クスクス笑う優太に、春は少し落ち込み気味。
「何だと思った?もしかして、期待した?」
「えっ…なに言って…」
「ははっ、冗談だよ!友達1番だろ?」
その言葉に、少し胸が痛んだ。
“友達1番”。
確かに優太の口からは、一度も恋愛に関しての話を聞いたことがない。
「春?どうした?」
「…ううん、なんでもないっ」
笑って見せるが、心の中は曇り空だった。
きっと…きっと優太は、私のことなんて…何とも思ってないんだろうな。
“親しい友達”それだけ……。

