『ありがとう!健太郎。また来てね』


鈴音のその言葉が、ずっと俺の頭の中に残っている。

花月楼へ行く度に、俺は鈴音にたくさん話をしてやる。
その話を鈴音は、夢中になって聞きながら、笑う。


鈴音に何かを教える事によって、必要とされてる気がして、気付けば俺も夢中になっていた…。



楽しくて 愉しくて、鈴音に必要とされたくて、俺は真面目に勉強をするようになった。




「熱心だね、健太郎」

よく足を運ぶようになった書庫で立ち読みをしていた俺に、優一が声を掛けてきた。

「あぁ、やっぱり此処の書庫は豊富だな。
兄さんが住み込みたいと言っていた理由がやっと分かった」

兄さん…、元気してるだろうか。