「好きだ、樹里。俺にはお前しか見えない。お前しか…いらない」 あたしを抱き締めたまま、そう囁く雨宮さん。 ホントは…泣きたいくらい嬉しかったんだよ? あなたもあたしを好きでいてくれて。 ……でもね、雨宮さん。 あたしには…どうしても消えてくれない大きな傷があるの。 ……どんなに過去と決別しようとしても蘇る…大きな傷。 「あたし……5年前、義理の父親に性的虐待を受けてたの」 あたしは小さく呟いた。 彼の体が、一瞬固まった気がした。