移動中のバスの中、あたしは廉がまだいないことに気付いた。




「あの、司令官。雨宮は…」




司令官にそう聞くと、彼は綺麗な瞳をあたしに向けた。




「あぁ、雨宮か。アイツならまだ間に合いそうにないらしいから後から合流するらしい。心配するな、すぐに来る」




黒目がちな切れ長の瞳が、少しだけ細められた。




そっか…。
廉、間に合わなかったんだ。




じゃあ出掛け先から急いで帰ってきてるんだ。




お疲れだなぁ…。




「ぷっ。宮崎って、こういう切羽詰まった状況でもかなり冷静だよな」




「へっ?」




いきなり隣にいた岡田くんが笑い出した。




「だってさ。ほら、他の奴等みんな怖い顔してるだろ?姫でさえ、綺麗な顔が強張ってる(笑)」




“姫”というのは美姫さんのことだ。




彼女は超絶美人なため、男性諸君から“姫”と呼ばれているのだ。




まぁ、分からなくもない。
彼女は…ホントに綺麗だから。




「いや…あたしは単にボケーッとしてるだけだよ。あたしもみんなを見習わなきゃ」




あたしがそう言うと、岡田くんはクスクスと笑う。




「……?何が可笑しいの?」




「はは。いや、宮崎には分からないことだから気にすんな」




笑いを堪えたようにあたしを見ると、岡田くんは座り直した。




……?なんなんだろ。




ま、いっか。




「そろそろ着くぞ。各自、準備しろ」




司令官の言葉を聞き、あたしは準備に入った。