†危険な男†〜甘く苦い恋心〜


廉の強い手の力に安心したのか、あたしは一呼吸置いた。




「……廉、早くここを出よう。あたしなんか気分が…」




あたしは口元を押さえた。




急に吐き気がしてきたのだ。




「樹里、大丈夫か?……おい、お前!もう二度と樹里に近付くんじゃねぇぞ!!」




廉は義父をそう罵り、あたしを連れて部屋を出た。




「ありがとう、廉…」




「これくらいどうってことねぇよ。トイレ行かなくていいのか?」




廉はあたしの背中を擦った。




その瞬間、一気に吐き気が襲ってきた。




「んっ……行ってくるっ…」




あたしはバッ!と廉から離れ、トイレに駆け込んだ。




――バタンッ!




「……ッ…ケホ…」




容赦なく込み上げてくる吐き気。




あたしは便器にしがみ付き、胃から出るものに耐えていた。




「……っ…はぁ…」




ようやく吐き気が治まり、あたしはゆっくり立ち上がる。




持っていたタオルで口元を拭き、トイレを出る。




最悪だ…。




これも全部……あの男のせい。