「樹里?」




廉が心配そうにあたしを見る。




「……話があるの。ちょっといいかな」




あたしは義父を睨むように見た。




義父は焦ったようにあたしをチラチラと見てくる。




「……あぁ、分かった。」




義父は冷や汗を流しながら頷いた。




「あたしの部屋でいいよね。早く来て」




あたしはスッとソファから立ち上がり、部屋に向かおうとした。




父はあたしの先を歩く。




行こうとした瞬間、いきなりグイッと手首を掴まれた。




「ひゃっ…」




気付けばあたしは廉の胸に抱き締められていた。




「樹里、行くな。」




「れ、廉?お母さん…いる、よ……?」




お母さんはびっくりしたような顔をしたけど、すぐに自室に戻っていった。




廉は……一向にあたしを離そうとはしない。




「……れ、ん?」




「1人で行かせられるわけないだろ。お前があの男に…今までどんな目に遭わされてきたのか知ってんのに……」




廉はあたしの存在を確かめるようにギュッと強く抱き締める。




あたしは彼の温もりに涙が出そうになった。