「廉くん、コーヒーで良かったかしら?」




「あぁ、はい。お気遣いなく…」




廉はお母さんに小さく頭を下げ、お礼を言っていた。




廉…大人だなぁ。




たった今、あたしにあんなこと言われたのに…冷静なんて。




「樹里、あなた最近仕事はどうなのよ。忙しいの?」




お母さんはカップを持ち、あたしを見てきた。




身内でお母さんだけには…言ってあるんだ。




SPからSATに移動したこと。




ていうか…元々、あたしがこの仕事に付いてることは、お母さんしか知らないけど。




「うん。けっこう忙しいかな。でも順調だし、大丈夫だよ」




あたしがそう答えると、お母さんは“そう”と返してきた。




「あ!廉くんは…お仕事、何なさってるの?」




お母さんはワクワクしたように廉に聞いた。




れ、廉…なんて答えるのかな?




あたしはヒヤヒヤしていた。