開店30分ほど前に、お店に着いた。


2回目とは言え、やっぱりこの独特の雰囲気には圧倒される。


先日もトイレ掃除をしていたスタッフが、無表情のまま軽く頭を下げる。


あたし達はそれを通り過ぎると、ロッカールームに向かった。


「急いで準備しなきゃね」


翼はそう言うと、鞄から化粧ポーチやアイロンなどを取り出した。


学校用のメイクや髪型は、あの場では十分派手なのに、ここではいたって普通に見える。


あたしは鏡に映る自分を見つめながら、どうにか”らしく”なるように、準備を進めた。


「よし、出来た」


鏡の前でクルッと回って見せる翼。


真っ赤なドレスが、彼女にすごく似合っていた。


あたしは今日は、ピンクのドレス。


「それ、あたしが着るよりも、未来ちゃんの方が似合ってるね」


そう翼は言ってくれた。


開店時間はもう目前。


あたし達は待機用のソファーに座り、その瞬間を待っていた。


「今日は平日だし、そんなに忙しくないと思うよ」


そう言って、携帯をカチカチと操作する翼。


今日はどんなお客さんにつくのだろう。


嫌なお客さんに、当たらなければ良いけど…