10月も半分ほど過ぎた頃。


ようやく生活リズムが板についてきたあたしとは反対に、翼は学校に遅刻したり休む日が増えていた。


あたしは10月から、週末の金土のみの出勤にしていた。


それだけ授業は詰まっていて、実習も始まる今季は、楽なものではなかったから。


同時に哲平のお店にも、週末しか行かなくなった。


本当はもっともっと、哲平に会いたかったけれど。


でも翼は今も、週4のペースでバイトに出勤し、そしてハル君のお店にも通っていた。


いつも寝不足だと笑う翼に、無理はするなと、何度言っただろう。


でも正直、そんな翼を羨ましくも思った。


家族や、奈美の存在がなかったら、あたしもそうしていただろうから。


哲平の存在だってそうだ。


哲平は口をすっぱくして、「学校だけは真面目に行け」と、言っていた。


やっぱりあたしは哲平の彼女で。


お店に行かなくたって、それ以外で会う事は出来たし。


お店に呼んだり、お金を使わされたり、無理を言われる事もなかった。


あたしの本分が勉強だという事を、ちゃんと分かってくれていたんだ。


そう考えると、お店に呼ばれ、お金を使わされ、無理をする翼は、ハル君の客でしかなくなってしまったのだろうかと心配だった。


それでも翼は、「大丈夫」と、笑っていた。


自分がハル君に会いたいからだと。


自分が好きでやっている事だと。


まるで自分に言い聞かせるように。


昔のように、楽しそうに微笑む翼なんて、もうそこにはいなかったのに。